Helmholtz Resonance Cabinet

Helmholtz Resonance CabinetNot Simulation But Creation

type-M_Cabinet_CloseUp

(日本国特許庁実用新案登録済:実新3200860)

まず始めに申し上げなければ鳴らないのは、「共鳴」を応用したスピーカー搭載方法は、今日では珍しい物ではない事。
最も身近な存在としては、液晶テレビやコンピューター・ディスプレイがあります。
これらの製品では極めて限られたスペースに取り付けられた小さなスピーカーでワイドレンジな音を出力するために、積極的に共鳴用ダクト等を用いている例が増えています。
翻って、ギターアンプのスピーカーキャビネットはどうでしょうか?
キャビネットのバリエーションとしてはクローズド・タイプ、セミクローズド・タイプ、オープン・タイプといったものが存在してますが、これらは全てキャビネットの「後ろ側」の話。

VirtuosOn_Conventional_Cabinets

前側はというと、どのキャビネットを見ても前面に分厚いバッフル板があり、そこにスピーカーユニットが取り付けられているだけです。
スピーカーユニットの前に取り付けられているのは、ユニットを保護するための布もしくは網だけ。

私達は30年前から「バッフル板は薄い方が、音抜けが良い」と気付いていました。
どの程度の薄さが良いかというと、具体的には2mm~10mm(from 5/64″ to 25/64″)程度で、ユニットの保持が可能な程度の厚みです。

もう一点気になっていたのは、「サウンドがダイレクトすぎる」と感じていた事。
従来のキャビネットでも箱である以上、共鳴音は発しているのだが、それはスピーカーユニットの後ろで起こっている現象。
スピーカーユニットの前には殆ど音を遮るものがないため、サウンドがダイレクト過ぎるのです。
そのため、ギタリスト達は快適な「響き」を得るために、リバーブやディレイといった電気的な空間系のエフェクトに頼らざるを得ませんでした。
では、他の楽器ではどうでしょうか?
エレクトリックギターに最も近い存在として、アコースティックギターがあります。
皆様も御存知の通り、アコースティックギターはボディが薄い板で構成された共鳴体となっており、豊かな共鳴音を発生してます。
更に他の楽器を見ても、やはり共鳴体を利用する物が普通の楽器の姿であり、エレクトリックギターが特殊な状況だったということが言えましょう。
弊社ではこの点に着目して、スピーカーユニットの前に共鳴を起こすためのバッフルプレートを取り付け、楽器特有の共鳴音を得る事に成功しました。

VirtuosOn_Helmholtz_Resonance_Cabinet
音抜けを重視した非常に薄いバッフルと、2重になったバッフルの相乗効果を持つ”Helmholtz Resonance Cabinet”で、ギターアンプのキャビネットは新しい時代に入りました。
エレクトリックギターが発明されてから半世紀以上が過ぎた今、ようやくギターアンプは「増幅装置」の域を一歩抜け出し、「楽器」の一部となったと確信出来ます。

ちなみにフロント側の共鳴用バッフルは、一般的なサイズの六角レンチを使えば取り外すことも可能。
このフロントバッフルを外した場合は、スピーカーからの出力がダイレクトに出力されます。
加えて薄く設計されたバッフル板にスピーカーを装着しているため、ほんの僅かなピッキングの強弱やミスタッチをもダイレクトに聴かせます。
この事は、フロントバッフルを外した状態では、極めてシビアなトレーニングが可能とも言えます。
バッフルを付ければ”Virtuoso”「達人」になった気分で心地良く演奏でき、バッフルを外せば”Virtuoso”になるための鍛錬を積む事が出来る、まさに”Virtuoso”のために造られたスピーカーキャビネットと言えます。

Not Simulation But Creation

真空管の時代からデジタル回路の現代まで、電気回路の進化に伴い様々な「残響」エフェクトが編み出されました。
スプリングリバーブ・プレートリバーブ・テープディレイ・アナログディレイ・デジタルディレイ・デジタルリバーブと。
近年はデジタル技術の発達により、残響音のインパルスレスポンスを活用した、コンボリューションリバーブと言う究極とも言える「残響音のシミュレート技術」が発達しています。

しかし他の殆ど全ての楽器においては「残響・共鳴音」を造り出すのは楽器本体の鳴りによる物。
当然の事ながら楽器本体の自然な物理現象による残響・共鳴音であるため、人間にとっても自然な音として聞こえます。

これに対して、これまでエレキギターに活用されてきた残響音技術は電気的な処理による物でありました。
そのため、ギタリストはディレイやリバーブの種類にこだわり、セッティングに苦労しながら音作りを強いられてきました。
かと言ってリバーブやディレイが無い状態ではギターサウンドが生々しすぎる傾向が強かったため、多くのギタリストは何らかの空間エフェクトが欲しかったのも事実。

そこで、私たちの開発した”Helmholtz Resonance Cabinet”の登場です。
このキャビネットでは、あえてスピーカーの前に共鳴板を設ける事で本来楽器が発生する残響・共鳴音を物理的に発生することに成功。
さらにスピーカーユニットを取り付けるバッフルプレート自体も非常に薄く製作することで、一層の共鳴音の発生を促し、加えて優れた音抜けを実現しています。

一方、ギターアンプシミュレートの世界では、コンボリューションリバーブと同様にインパルスレスポンス(以下、IR)を積極活用することであらゆる種類のキャビネットとマイクロフォンの組み合わせをシミュレート出来る様になりました。
この技術は自宅のPC等で手軽に使用できるため、真夜中の自宅レコーディング作業で特に重宝する物である事は、私たちも重々承知してます。
ただし、この方法で実現できるのは、あくまでも「キャビネット音をマイクで拾った音」である事に御留意下さい。
しかもシミュレートされた音は、IRを作成する時に録音された「トーン」に大きく左右されます。
例えば”Player A”というギタリストの音を基にIRを作成したとしましょう。
このIRを使ってギターを鳴らせば、見事なまでに”Player A”の音になります。
どうしても”Player A”とそっくりの音を出したい方にとっては非常に有効な方法ですが、裏を返せばあなたを含む他のプレイヤーの音にはなりません。
それならば全く癖の無い音をギター用のキャビネットで鳴らして録音し、これを基にIRを作成すれば良いのではないかと考えるかもしれません。
一見すれば理にかなった方法ですが、この場合は癖の無い音は出るものの、どうしてもギターのトーンに「癖の無い音」が含まれるという問題が起きます。
何よりも重大な事は、先に述べたとおりシミュレートされる音は「マイクで拾った音」なのです。
マイクで拾った音であるがゆえに、「ギターアンプが傍で鳴っている」音にはなりません。
その点、私たちの開発した”Helmholtz Resonance Cabinet”はシミュレーションではなく、ギターアンプ・キャビネットの進化した姿です。
まず根本的に、実物のギター用スピーカーユニットを搭載したキャビネットであるため、シミュレートされた音ではありません。
そして適度な残響・共鳴を伴う私たちのキャビネットならば、リバーブ等の空間系エフェクトを使用せずとも自然な残響が得られるため、これまでの電気的に作られたエフェクトに満足頂けなかったギタリストの方にも受け入れられて頂けると確信しております。
更に言えば、私達の作るキャビネットは小音量であっても「響く」音になっていますので、自宅のリビングやベッドルームにおいて、ひたすらトーンを追求する用途にもベスト・フィットするでしょう。